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フランスの水

フランスに来て困ったことの一つに水の違いがありました。硬度の高いフランスの水だと髪がバサバサになったり、また乾燥していることもあってか肌荒 れなどにも悩まされました。いろんなシャンプーを試し、いろんなクリームを試し・・・今はこちらの環境になれましたが。

料理の際には、水道水を使ってお湯を沸かすと白い枠が鍋の周りにできます。それくらい硬度の高いお水が水道から出てくるということは、 定期的に台所の水周りのお手入れをしなくてはいけません。蛇口は放っておくとカルシウムで詰まってしまいますし、シンクの周りも白くなってきます。

また水を使うといえばお洗濯。こちらも何も対策をしないとホースなどがカルシウムで駄目になってしまうそうです。

そこでフランスの家庭ではこんな商品を使っています。


キッチンのカルシウム除去に使うAntikal(アンチカル)!
洗濯用のCalgon(カルゴン)!

最初はその名前に笑ってしまいましたが、なくてはならない必需品です。Antikalは 白くなった台所に液体を流ししばらく待ちます。すっぱい匂いが台所に充満します。そしてCalgonは洗濯時に洗剤と一緒に洗濯機に入れます。

市販されているメジャーなミネラルウォーターの硬度を見てみてもいかにフランスの水が硬水かがよく分かります。

フランスと日本のミネラルウォーター 硬度比較
(*硬度 は、水に微量含まれるカルシウム(Ca) 塩やマグネシウム(Mg) 塩の濃度を ある方法で表現したもの)

商品名 硬度
サントリー南アルプス天然水 30
ヴォルヴィック 62
ハウス六甲のおいしい水 84
エヴィアン 304
ヴィッテル 307
バドワ 824
コントレックス 1551

もちろん、フランスの水道水はきちんと処理がされているので飲めます。しかしあのカルシウムを見てしまうと・・・。それから建物の中を 通る水道管の衛生によっては水質もちょっと気になってしまいます。

フランスの水道水に関する記事を見つけたので少しご紹介します。

《水道水のバクテリア》

新世代の分析方法を利用して行われた水質調査でパリ地域の水道水の中に複数のバクテリアが存在することが確認された。このことにより殺 菌された水道水という我々の誤った考えが崩された。つまり塩素で全ての微生物が取り除かれていると思っていたにもかかわらずそれが否定されてしまったので ある。「もし同じ調査をミネラルウォーターで行ったとしても、もちろんバクテリアが発見されるだろう」と専門家は述べる。フランス全土の水道水の中にバク テリアは潜んでいる。

実験で分析された水はOrly、 Ivry-sur-Seine、 Joinville-le-Pontで採取されたもの。これら3つのゾーンはセーヌ川とマルヌ川から供給されている。「我々は以前は知らなかったような3 つの大きなバクテリアのグループをこの調査で発見した」と研究者は語る。

ただこの調査ではまだそれらのバクテリアが生きているのか死んでいるのかは確認ができない。まだまだ研究の途中である。

「パリ地域の水は安全である。充分な塩素で、微生物追跡調査も充分である」とさらに研究者は主張する。しかし、それでも、水道水という のはエコシステムの一部である。バクテリアというのはこの地球上に昔から存在しており、栄養分が少ないとはいえ水道水を利用して生きていけるのだ。「大きな栄養分はないが、水道管の中で炭素の粒子が分解されればそれで充分。バクテリアはそれを栄養分とし広がっていく」。

水道水は殺菌処理を工場でなされたあと、何キロにも及ぶパイプを通って行く。このパイプ網が全て生態学的に均質であると想像してはなら ない。あるパイプの一部が老朽しているだけでバクテリアたちはそこに住み着くことができる。パリで多くの人たちが経験しているように、あるレストランでは水道水が泥の味をしている場合がある。これはカラフ(水を入れるガラス瓶)がいつも清潔に保たれていないだけでなく、建物のパイプにも問題がある。「たい てい悪臭を引き起こすのはバクテリアである」と研究者は説明する。水道の水からいつかこういった微生物を取り除こうと思うのはむなしいだけである。

(以上 フィガロより訳/要約 aki)

ワインをあまり飲まない私たちは、レストランに行くとだいたいが carafe d’eau(カラフドー)と言って水道水を頼むのですが、確かにお店によっては変なにおいのする水が出てきたことがあります。健康に害はないんだろうけれど、 ちょっと気になってしまう(そういう時はミネラルウォーターで)。また家でも、やっぱり建物の中のパイプのことやカルシウムのことを考えるとダイレクトに 水道水をお料理に使うのには抵抗があります。よく流しの底が赤褐色になることがあるので、建物の水質を見てもらったところFe(鉄分)が多く含まれているとのこと。住んでいる建物は古いというわけではありませんし、どちらかというと周りの建物よりも良好な状態。でも使われているパイプなどによって成分が 変わってくるそうです。カルシウムも鉄分も日本人には不足しているからいいじゃないかと思うものの・・・。

そういった背景があるため、フランスではいろんな種類のミネラルウォーターが売られており消費量も多いのでは。でも いつもミネラルウォターばかりだと経済的にも環境的にも良くないですね(そこでうちではブリタの浄水器を使っています)。

しかし逆にマルセイユの両親の家では水道水を抵抗なく飲んでいます。水源が違うのとパイプの状態もよいのか飲みやすい。

下の図は、フランスの各都市における表層を流れる水の水質を表しています。
Qualite des cours d’eau vis-a-vis des pesticides dans les reseaux de connaisance generale et les reseaux phytosanitaires en 2006
2006年度における殺虫剤にに対する水流の質と植物衛生網

丸いマークはSEQの質 : SEQ=eau qualité globale eaux superficielles 表層を流れる水の水質
三角のマークは植物衛生網
青色‐とても良い/緑‐良い/黄‐平均/オレンジ‐平均より劣る/赤‐悪い

Source: Agences de l’eau - Conseils generaux – Diren -Draf,SRPV ‐ Traitement SOeS (SEQ-eau qualité globale eaux superficielles)

やはり都市やその周辺は質が劣り、地方は良好ですね。アルプスの水は本当に冷たくておいしい。

次の図はフランスの水質を表しています。100%とある地域(白)はそこで生産された水の100%が水質検査に通って供給されていま す。グリーンの濃い部分は70~80%。

water quality
Source: La qualite de l’eau potable en France - Aspects sanitaires et reglementaires

さらにこちらはお水の価格。2004年度の各県の水の平均価格です(単位:ユーロ/1立方)。人口の大きさにも関係してくると思うのですが、マルセイユは結構お水が高いんですね。


Source:Ifen-Scees,Enquete Eau 2004

そしてこちらは水の硬度を示しています。軟水(緑)~硬水(赤)。


Source: l’IFEN

地域によって硬度はさまざまです。一概にフランスの水=硬水とは言えませんね。また地域によってもそうですが、パリなどではその建物によっても味が変わってくるのはとても興味深いというか、考えさせられます。先ほど、マルセイユでは気にせず水道水が飲めると書きましたが、グラフを見ると水質、硬度の点から見てそのことがよく表れているように思います。

それにしても、普段からチーズなど乳製品をたくさん食べているにもかかわらずものすごい硬度のミネラルウォーターを飲むフランス人。私にはあのドロッとしたような重い水はどうしても飲めません。すっきりさっぱり日本のミネラルウォーターが一番。そして日本人なので魚からカルシウムを取る のが一番!

そしてたくさんのカルシウムを摂るフランス人たちは、サラダなどにビネガーをよく使います。うそか本当かは分かりませんが、それが体内 のカルシウムを分解してくれるのだとか・・・。