フランスの人種問題

フランスに現在住む私は、もちろんフランス人にとっては異人種の一人。今まで日本に暮らし自分がマジョリティだったころは、人種という言葉にそれほど関心がなかったように思います。とりわけ日本という国は単一民族で、人種というものが問題になることは少ないですからね。しかし海外に出ると否応なしに日本という国がどれほどユニークな国であるか感じさせられます。

フランスへの定住移民
フランスの合法的移民数が1999~2002年に36%増。この背景には97年から5年間に及ぶ左派政権によって行われた不法移民の合法化の動きがあり、 今や来仏する移民の主要目的は家族呼び寄せなどの「家族形成」だという。(この報告書は社会問題省の人口・移民局が作成したものである。)

フィガロ紙で明かされた概要によると、国際移民局、内務省、仏難民・無国籍者保護事務局の統計に基づき調査した結果、2002年に定住目的で1年以上の滞在許可証を取得した外国人は前年比16%増の156万人を記録。98年の11万5千人と比べると驚異的な伸びで、特に欧州経済圏外の出身者が増加している。

この「家族呼び寄せ」カテゴリーの来仏者は99年の5万人から02年には8万人にのぼり、03年も続いた。しかし移民法改正により、新規移民法の定住化条件が厳しくされたことから、今後の移民増は微妙な情勢。

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人種問題
このように国内にさまざまな人種が集まることにより、文化・習慣などのトラブルが起こる。移民してやって来る者の多くは貧しい階級出身で教育がしっかりされていない。そのため犯罪を引き起こしやすい。また宗教の違いから起こる差別は一国だけでなく世界全体を取り巻く問題となる。

ユダヤ人とムスリム
その中でも一番の問題が、ユダヤとムスリムである。 ここに最近あった事件記事を挙げます。

2004年7月9日、マリーという23歳の女性が、パリ郊外の電車内で6人のアラブ人と黒人に襲撃されたと通報。調べによると、6人グループはこの女性をユダヤ人だと思い込み、女性の髪や体をナイフで傷つけ、体に旧ナチスドイツの党章、卍のマークを刻み込んだということだ。さらには 13ヶ月になる彼女の赤ん坊までもターゲットに。その間乗客といえば知らぬ顔。

これに対しシラク大統領は、「反ユダヤ人の理由のない攻撃である」と非難し、犯罪者に対して厳しい措置をと訴えた。

しかしながら、この事件は解明されることなく、7月13日までに当事者であるマリーが「全ては彼女自身がでっち上げたうそであった」ということを告白し、多くの国民を驚かせた。

ここで注目したいのは、国民をはじめ、国家のトップでもある大統領の反応の大きさである。このことは、人々がこのような事件が起こりう るということを知っているのだということを裏付けている。今日のフランスは、こういった反ユダヤなどの人種差別が日常の中に浸透してしまっているのです。 フランス人権協議委員会は、2004年度上半期においてすでに766件の反ユダヤなどの人種差別に関する脅迫や襲撃があったと報告している。これは去年一 年間で起こった817件とほぼ同じ。2004年に起きたケースのほとんどはユダヤ人がターゲットとされているが、アラブ人に対する差別犯罪も膨れ上がって きている。2003年では164件であったのが、2004年の上半期にはもうすでに256件の事件が起こっている。

統計によると、2000年以来、フランスの約650,000人のユダヤ人コミュニティがその主な襲撃の標的となっており、以前は近代ナチスがその決行者であったが、現在はそのほとんどがフランスの荒れた郊外に住む恵まれない環境のアラブ系の若者たちに取って代わっている。フランス警察情報機関から漏れた最近の機密情報によれば、200万人以上のフランス人がこういったスラム化した300の郊外に住み、社会の主流から切り離され、暴力や宗教過激主義に包囲されてしまっている。こういった問題の背景には、パレスチナ問題やイラク戦争があり、若者たちの怒りをユダヤ人に向けさせてしまっているのだ。

現在のところこういった事件の背後に組織立ったものは見られませんが、ユダヤ人リーダーたちは、「フランス政府が反ユダヤを非難しないために、フランスには5万人ものムスリムがいるにもかかわらず、多くの襲撃がユダヤ人に向けられるのだ。」それに対しムスリムリーダーたちも、「反ユダヤ 感情の裏にアラブ人があげられること自体人種差別のあらわれだ。」と反論している。

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しかしながら、現在反ユダヤが問われるとき、ムスリムが疑われるのは免れない。フランスでは蔓延する《イスラム嫌い》のため、責任が全てムスリムコミュニティへと運ばれてしまうのだ。

ユダヤ人以外の人々にしても、日々の偏見だけでなく、明らかな差別へと変化している。それらは報告されないでだけで、共通の人種差別であるといえる。

シナゴーグやモスクなどは放火され、ムスリム・ユダヤ人の墓地は近代ナチスの冒涜の場所と化している。

grafitti on tombstones

一方フランス側は、宗教や文化の違いは公の場所では禁止されるべきだと訴えている。ムスリム女性のスカーフもその例の一つになるだろう。学校という公の場で宗教の主張をするべきではない。そこは平等に与えられた宗教越えた場であるからだ。

以上TIME紙より参考

 

パリの中の文化衝突