パリジャン形容詞

パリで配布されているフリーペーパーの一つ、Direct matin plusからの記事です。電車の中で読んでいたらおもしろかったのでフランス語レッスンと一緒にご紹介します。

まず、記事の出だしは、

Entre les provinciaux et les parisiens, c’est l’amour vache.
地方出身者とパリジャンの間の手厳しい愛情

vache(ヴァシュ)の使い方がおもしろいですね。本来は「牛」という意味なのですが、ここでは (口語)「ひどい/意地悪な」という意味で使われています。普段でも耳にする言葉で、よくLa vache!と言ってますね。「ちくしょう/ひどいッ/すごい!」といった感じでしょうか。
Elle est toujours vache avec moi. 「彼女はいつも私につらく当たる」
C’est vache, il pleut. 「ついてないや、雨だ」

そして、あるアンケートによると、地方出身者から見るパリジャンというのは地方出身者に比べて次のように思われているそうです。

plus stresse (91%)  (ストレッセ) よりストレスがたまっている
moins souriant (71%) (スリアン) あまり笑顔がない
plus snob (71%) (スノブ) よりスノッブ(上流気取り)
moins sympathique (57%) (サンパティック) あまり思いやりがない
moins drole (61%) (ドゥロール) あまりおもしろくない

地方出身者とパリジャンを比べているため、plus(プリュ)=more /moins(モワン)=lessが 形容詞の前についています。
Les parisiens sont plus stresses que les provinciaux.
Les parisiens sont moins souriants que les provinciaux.

さらに、パリジャンの欠陥はそれでは終わりません。

plus aggressif(アグレッシフ) より攻撃的
moins epanoui(エパヌイ) あまり明るくない
moins accueillant(アクエイヤン) あまり愛想がよくない
plus chauvin (ショヴァン) より排外的
plus nombriliste(ノンブリリストゥ) より自己中心的

うーん、ネガティヴボキャブラリーのオンパレード。でも勉強になる・・・。

まずepanouir(エパヌイール)とは「(花)が咲く」という動詞で、それが顔の表情「晴れ晴 れとした」と言う表現にも使われています。
Il a un visage epanoui. 「彼は晴れ晴れとした表情をしている」

accueillir(アクイール)は「~を歓迎する、出迎える」という意味。そこからaccueillant(ア クエイヤン)の意味は「人を快く迎える、もてなしの良い」となります。

chauvin(ショヴァン)はchauvinisme(ショ ヴィニズム)「愛国主義/排外主義」からきていますね。

そして最後に、私も知らなかった単語nombriliste(ノンブリリストゥ)。nombril(ノ ンブリル)といえば「へそ」、それと何か関係があるのか?辞書で調べるのにどんな意味なんだろうとワクワクしてしまいました。nombrilは 「へそ」という意味のほかに「中心」という意味も持っていました。なるほど体の中心にあるから。そこでこんな表現を発見。

se prendre pour le nombril du monde 「自分を世界の中心だととらえる」
se regarder le nombril 「自分のへそを見る」 つまり 「自分にしか興味がない」

なるほど、そこから「自己中心」という意味が来ているんですね。

そしてさらに記事は進みます。

かなり否定的な形容詞でパリジャンを形容したあとに、フォローもちゃんとしなければなりません。パリジャンのプラスイメージは次のような形容詞です。

plus travailleur(トラヴァイユー) より働き者
plus informe(アンフォルメ) より知識がある
plus chic(シック) よりシックである
plus cultive(キュルティべ) より教養がある
plus fetard(フェタール) よりお祭り好き
plus branche (ブランシェ) より流行に敏感

以上80%が回答

travailler(トラヴァイエ)は「働く/勉強する」。そこからきたtravailleur(ト ラヴァイユー)は「働き者、勤勉、勉強家」。

informer (アンフォルメ)「知らせる」。英語読みでinformation(イ ンフォーメーション)と読んだ方が意味がピンときますね。そこからinforme(アンフォルメ)は「情報に通じた/ 知識のある」という意味を持ちます。

日本語にも入ってきているcultureカルチャー(フランス語読みはキュルチュール)という単 語。「文化」という意味のほかに「教養」、さらには「耕作/栽培」「養殖」という意味も持っています。 動詞のcultiver(カ ルティヴェ)は「耕す/栽培する」「教養を身につける」。

fetardもおもしろい単語ですね。 fete(フェット) というのが「祝日/お祭り」という意味でよく知られています。英語で言うfestivalフェスティヴァル。

branche(ブランシェ)は、動詞のbrancher(ブ ランシェ)からきています。brancher(ブランシェ)はもともと「プラグを差し込む」という意味があります。そ こから「~に向ける/導く」「~の興味を引く/関心を引く」という意味が続きます。

例えば、Je branche la lampe sur la prise. 「ランプをコンセントにつなぐ」

そして、そこから、形容詞のbranche(ブランシェ)「電源が入っている」「事情に通じてい る」「今風の、流行の」という意味がでてきます。

C’est un restaurant branche ici. 「今流行のレストランです」

確かに、都会にいれば情報はたくさんあるはず。当たり前といえば当たり前かもしれませんが・・・。でもこういったプラス意見のおかげで何とかパリ ジャンもうまく乗り切っていけるのだそうな。68%のフランス人が良い意見をパリジャンに対して持っていることになるそうです。

C’est l’amour vache. 微妙な愛情ですね。

*アクサンは省略してあります。