確か中学校の英語のテキストだったと思いますが、英語のbreakfast(朝食)の由来は break(破る)+ fast(断食)、つまり「断食を破り最初に口にする食事が朝食」だと知りました。多分昔の人の一日というのは日が昇って暮れるまでで、夜には食事を取ら ない、つまりそれを断食と考えて夜が明けた後の最初の食事が朝食となったのでしょうか。
英語で三食をあらわすと次のようになりますね:
breakfast 朝食
lunch 昼食
dinner 夕食
そして実はもう一つ、
supper (サッパー)軽い夕食 という語が存在します。
簡単に考えると、豪華な夕飯、晩餐といえばdinnerで、それとは対照的に「軽い」夕飯がsupperだ と覚えておけばいいでしょうか。しかし辞書でさらに調べてみると、dinnerには「正餐」という意味がついてます。 「正餐」とは正式の献立による料理で、西洋料理では一日の主な食事とて意義付けられています。つまり、一日の中で一番メインの食事がdinnerで あり、それが必ずしも夕方に食べるものとは限らないということです。
すると、昼食にdinnerが来るとその夕飯はsupperも しくは文化によってはteaと呼ばれ、夕方にdinnerをとればその日の昼食はlunchと 呼ばれることになります。dinnerが昼食になったり夕食になったり、なんだかややこしいですね。でも通例はdinnerは 「夕飯」で通っていますから、あまり深く考えないように。
dinnerの派生語dine(ダイン)は「夕飯を食べる」で はなく「正餐を食べる」という意味になっています。
*ちなみに、最近よく耳にするbrunch(ブランチ)は、 breakfast(朝食)+ lunch(昼食)からなった造語ですね。
英語の説明が長くなってしまいました。ここからフランス語を見ていきましょう。フランス語で三食を表すと、
petit-dejeuner (プティ デジュネ) 朝食
dejeuner (デジュネ) 昼食
diner (ディネ) 夕食
souper (スペ) 軽い夕食
では、まずdejeunerから。この言葉は、de+jeunerから成り立っています。deは「分離・除去・否定・反対」などの意味を持つ接頭語で、jeunerはなんと「断食する」 という意味を指しています。つまり英語のbreakfast「断食を破って最初に口にする食事である」という考えと全く同じですね。では、なぜフランス語のdejeuner「断食を破って最初に口にする食事」は昼食なのでしょうか?
その答えを先日辞書を読んでいて発見しました(辞書を読むのが趣味なもので、よくマニアックと呼ばれます)。そこには、dejeunerと はやはり元来「朝食」という意味をもっていたとありました。dejeunerが朝食、dinerが 昼食(むしろ正餐と考えたほうがいいでしょう=一日で一番重い食事)、そしてsouperが夕食(soupeスープから来ている単語で、スープくらいの軽い食事)というふうに人の生活は流れていたようです。
しかし、その生活スタイルが変化し、dinerつまり正餐が昼から夕方に移ってしまいます。する と、dejeunerが昼食、dinerが夕食、souperは観劇などの後でとる夜食という意味に変わってしまい、朝食を表す語がなくなってしまいました。そこで、dejeunerにpetitを 付け加えてpetit-dejeuner朝食という言葉が生み出されたということです。おもしろいですね。
ちなみにdejeunerを動詞として使うと、「昼食をとる」と「朝食をとる」という2つの意味を 抱えています。もちろんpetit-dejeunerでも「朝食をとる」という意味を持っていますが、こちらは話し言 葉となっていました。
時代によって、文化によって、生活様式が変化し、単語にも影響が見られるおもしろい例ですね。でもこのように考えると日本語が一番シン プルでいいですね。朝昼晩。時間帯を中心に考えるのが一番分かりやすい。
***アクサン記号は省略してあります***