トランペット

トランペットはフランス語ではtrompetteトロンペットと呼びますが、トロンペットという音を聞くともう一つのフランス語tromperトロンペ(騙す、欺く)という言葉が頭に浮かびます。何か必ず関係があるはずと、主人に語源辞書で調べてもらったところ、trompetteの動詞にあたる trompeter トロンペテの項目で、昔はそのままストレートに「らっぱを吹く」と言う意味で使われていたものが、何かを「吹聴する」という意味に発展していったとあります。

そして、もう一つおもしろいのは、 trompetteのもう一つの意味に「ホラガイ」があります。そう、日本語でいう「ホラを吹く」は「騙す」と言う意味ですね。英語でもTriton’s trumpet「トリトンのトランペット」と呼ばれます。トリトンと言うのはギリシャ神話に出てくる海の神で、波を立てたり鎮めたりするためにほら貝をラッパのように吹きます。そのほら貝の大きな音は、巨人たちが「野獣のうなり声だ」と勘違いして逃げ出すほどおそろしいものであったそうです(ウィキペディアより)。

一方、日本語の「ほらを吹く」の語源は仏教から。サンスクリット語の「シャンカ(螺貝)」は、楽器として用いられ、戦場での出撃合図にも使われていました。仏教ではそのシャンカを吹くことを仏の説教に喩えたようです。つまりお釈迦様の説法。 釈迦が法(教え)を説くことを「法螺を吹く」と言い、それが「釈迦のような偉ぶった説教をする」となり、さらには「大げさなことを言う」、「うそをつく」という意味に変化していったそうです(慣用句辞典より)。

またフランス人のジェスチャーの一つで、ラッパを吹くまねをすると、うそをついているということを暗示するようです。

tromperie 「ごまかし、虚偽」

trompeur 「人をあざむく、偽りの」

tromper 「だます、欺く」

英語にも He blows his own trumpet. と言って、「ほらを吹く」と表現できますし、文語ですがtrumpery と言うと「見掛け倒しのもの、くだらないもの」という意味があります。

最後に、trompe-l’oeil 目をだますで「騙し絵」