どっちのパ

「ことば」というのはいろんな法則やルールがあり、時にそれは不規則であることがっても、やっぱりおもしろい。文字を目で見て、耳で聞き、いろんな 感覚を使って吸収することは大事なことだと思います。もちろん自分の母国語も含め、普段使っていることばを違った角度から見てみるととても興味深い発見が あります。

まず視覚と聴覚を使った「ことば」のおもしろさを少し紹介しましょう。

[同音異義語]・・・音は同じで、意味の異なる語。

例えば、日本語にはたくさんの同音異義語が存在します。「カワ」という音を聞いて何を想像するでしょうか。川?皮?革?同じ音でも、そ れぞれの漢字を目で確認すれば意味が即座に現れてきますよね。では、「オショクジケン」は、汚職事件?それともお食事券?

英語にも存在します。「ペア」と聞いて、pair(一対)? pear(梨)?pare(皮を剥く)?のどれを頭に浮かべましたか? では、「ゴリラ」は、gorilla(ゴリラ)? それともguerrilla (ゲリラ)?同じ音なんですよ。

gorilla

[同綴異音異義語]・・・綴りは同じで、音と意味が異なる語。

日本語では、「大家」という文字を目にした時、「おおや」、「たいか」、「たいけ」とも読めます。そして意味も異なりますね。
「おおや」=貸し家の持ち主。家主。
「たいか」=学問・芸術・技芸などの面で特にすぐれ、名声の高い人。巨匠。または大きな家。
「たいけ」=金持ちの家。家柄のいい家。

英語では、minuteという単語を目にした時、「ミニットゥ」(分)と「マイニュートゥ」(綿密な)という違いがあることに注目。お もしろいのはhousewifeで、これを「ハウスワイフ」と読むと(主婦)、「ハウジーフ」と読むと(針箱)となるんです。

そして本題のフランス語。最近は頑張って長めのフランス語の文章を読もうと頑張っているのですが、この同音異義語に引っかかってしまい ました。その文章とは、

≪Il s’agit d’un nouveau pas vers la reduction de la consommation d’energie.

Il s’agit de~の部分で「~することが重要だ」という意味。
la reduction de la consommation d’energieで「エネルギー消費の削減」

なんとなく言いたい事は分かったのですが、なんでここに「打消しの」pas(パ)があるのだろうと 考えてしまいました。それに前の部分に新しいという意味のnouveau、不定冠詞unもついているし。

ちなみにpas(パ)の使い方は、
Je suis fatigue. (私は疲れている)にne~pasの セットが付け加えられて、Je ne suis pas fatigue.(私は疲れていません)と否定文に変えられます。またときに、neが省略されることもあります。 C’est pas vrais.で(まさか!)

全く知らない単語なら辞書を引くのですが、pasは「打ち消し」と頭の中にインプットされていたの で、別の単語が存在するなんて考えませんでした。そこで訳せずに困っていると、主人がそれは「ステップ(step)」だよと。エー、そんな意味が…。

辞書にもありました。pas 1, pas 2と。この文章の中に使われている pas 1は「ス テップ/歩み/足音/足跡/歩幅」という意味で、上の文章は「エネルギー消費の削減に向けて新しいステップをとることが重要だ」と訳せます。関連表現にも なるほどーと思うものがたくさんありました。

steps

a pas de loup オオカミ(loup)の歩みで「忍び足で」
a pas de tortue カメ(tortue)の歩みで「ゆっくりと」
faire les cent pas 百(cent)の歩みをつくるで「行ったり来たりする/ そわそわして落ち着きがない」

そしてfaux pas(フォ パ)
fauxは「間違った、偽の」という意味があり、faux pasで「(足)のつまづき:失敗、失策」 となります。これは英語にもなっていて英語も「誤り、(エチケットに対する)失敗」という意味で使われます。あのpasっ てこのpasだったんだーと一人でちょっと感動に浸ってしまいました。前はフランス語なんて興味なかったからな あ…。

というわけで、「パ」は「パ」でも意味が違うことを学べた文章でした。まだまだ勉強が足りません。頑張ります。

*アクサンは省略してあります。