9月も下旬、でもまだまだプロヴァンスは元気です。太陽が照り、遅めのヴァカンスに出かける人も多い。
私たちもそんな遅いプチヴァカンスへ南はTGVに乗ってAvignon(アヴィニョン)へ向かいます。そこから車で4、50分、週末を家族みんなで過ごしたLuberon地方にあるMenerbes(メネルブ)という村。厳密にいうとMenerbes(メネルブ)村とお隣Lacoste(ラコスト)村の中間に当たるブドウ畑の真ん中に立つ家を借りました。静かで、何もないのんびりとした場所です。夜は月明かりで、音が何もしません。7、8月のヴァカンスピークには人口が増えるそうなので、意外と時期をはずしたほうが当たりだったのかもしれません。驚いたことは、Anglais(イギリス人)の多いこと!Avignon駅に降り立ったときから英語が耳に入ってくる。それはこのMenerbes村も同じ。こんな小さな村に英字新聞が売られているのを見ればどれくらい多いのか分かるでしょう。話によるとこのあたりはたくさんのイギリス人が別荘を所有しているのだとか。暗いイギリスから太陽を求めてやってくるんだそうです。私も散歩をしていたら、Helloと声をかけられてしまいました(Bonjourと答えましたが・・・)。不思議な環境です。
ここがヴァカンス用に借りた家。石造りでひんやりした部屋。一階はキッチンと大きなリビングルーム、二階は3つのベッドルームとシャワー室、トイレ。周りはなーんにもありません。ブドウ畑が広がっているのみ。裏庭(右写真)にはバーベキュースペースが設けてあり、夜はそこでディナーを。少し間をあけてお隣さんもいるのですが、その方たちもイギリス人でした。
家の周りを少し散歩。ブドウがたくさんなっていましたよ。
家の庭にもブドウの実が。とても甘い!中央写真はホウズキにていますが、中は空っぽだそうです。家の中にもデコレーションでたくさん飾ってありました。右はドングリ?
全体的に乾燥していて、草にたくさん白い小さなエスカルゴがくっついているのが見えます。たぶん空気中の水分を吸収しようとじっと待っているのでしょう。歩くとバリバリと音がします。歩く場所のないくらいそこらじゅうに広がっているんです(白い花のようでよく見ないとそれがエスカルゴとは分かりません)。そんな中見つけたカラフルな花の写真です。
家の壁にカマキリも発見! と、こんな感じでぶらぶら歩き回って楽しんでいました。落ち着きます。
さて、プロヴァンス、おいしいものも忘れてはなりません。たくさん素敵なレストランが隠れています!私たちが訪れたのはMenerbesから北へ向かったJoucas-Gordesという村にある4つ星ホテルHotel Le PhebusのXavier MATHIEUというレストラン。一番乗りでレストランに着いたためスタッフの方々が挨拶に出てこられました。シェフのXavier MATHIEUさんまでも!ガイドブックに載ってた人だー、と感動。白髪交じりの長い髪に黒い眉毛が印象的。まだ若そうな方です。オリジナル商品や、自画像の絵もレストラン内に飾ってありましたよ!
さあ、彼のスペシャリテは、ピストゥスープ(左)、ピエパケ(中央)など全て伝統的なプロヴァンス料理。このピエパケ、ぜひ味わってみてください。ピエパケには特にうるさい主人がおいしいと言ってもくもくと食べていました。とてもユニークです。臭みがまったくなく、でも伝統的なピエパケの味はしっかりと。上にのっている細長いもの、結局なんだったのかよく分からなかったのですが、香ばしくておいしかったです。ピストゥスープはあっさり系で、デコレーションがとてもきれいでした。デザートは3回に分けて。メインデザート(右)はゆずを使ったムース。最近フランスではゆずブームなのでしょうか。いろんなレストランでゆずが使われています。コーヒーについてくるデザートは、カートの上にいろんなデザートがのっていてそこから好きなものが選べるようになっています(絶対全部は味わえません!)。いろんなクッキー、キャラメル、シャーベット、オリーブオイルを使ったマシュマロとかありましたよ。メニューは50、80、110ユーロ。
Restaurant XAVIER MATHIEU
Route de Murs 84220 Joucas-Gordes
TEL: 04 90 05 78 83 WEBSITE www.lephebus.com
さあ、おいしいものをたくさん食べ、ぐっすり眠った次の日はMenerbes村中心へ。
週末だったからでしょうか、ほとんど人にあいませんでした。天気もよく気持ちのいい朝の散歩です。
中心に広場があり、そこの小さなトンネルを抜けると下の写真のパノラマ風景が現れます。
一面ブドウ畑。9月末のプロヴァンスの様子です。
小さな集落には古そうな建物がたくさん。通りの名前は『Rue du Portail Neuf』つまり新正面扉ですが、どうみても年季が入っている(左写真)。
またMenerbesはアーティストも集まっています。こちら村の一角にあった公園。Joe DOWNING(1925-2007)に捧げるとあります。彼はフレンチアメリカンの画家であり、詩人でもある人物。1950年からフランスに住み、プロヴァンスMenerbesで活躍されていたそうです。
左の写真の壁にうっすら見えるでしょうか、ものすごい古い郵便局のサイン。この建物今はアパートですが昔は郵便局だったということ?右は、マルセイユのこちらも古い新聞のサイン『Marseille Matin』。今は存在しないそうです。
そしてこちらの写真はこの村が城砦だったことを示しています。
この地域の経済は徐々に低下し、1945年の後は安いHoliday Homes(休暇用貸家)の経営が始まります。しかし1960年までにMenerbesの人口は半減。ピカソのモデル一人であったDora Maarや芸術家Nicholas de Staelの未亡人が住んでいたこもあり、有名芸術家たちが多く訪れました。また、1990年、Menerbesに暮らしたイギリス人作家Peter Mayleの本によりこの村は英語圏で知られるようになりました。彼の作品のひとつは映画化された、Ridley Scott監督、Russell Crowe主役のA Good Year(2006年)です。実際撮影が行われたのは近くの村Bonnieux。
小さな村なのであまり詳しくは分かりませんが、なぜイギリス人が多いのか理解できたような気がします。
またMenerbesの名前ですが、おそらくラテン語のMinerva(ミネルヴァ)から来ているだろうと考えられています。ミネルヴァとは詩、医学、知恵、商業、製職、工芸、魔術を司るローマ神話の女神。
ではお隣の村Lacosteラコストについて
1038年に最初の『Castrum de Costae』という名前が挙げられており、その名前はcosta 、ラテン語でcote(oにアクサン付)から来ています。日本語でいう「坂道、(丘)斜面」。この城砦を建てさせた領主はRobertとFarald Varacon、そして彼らのいとこたちLes Agoult-Simianeが11世紀の終わりにこの城を手中にします。St.Trophimeに捧げられた教会が1123年に建てられ、1325年ま でSaint-Eusebe de Saignon修道院の修道士たちによって祭務が代行されました。
またLacosteと言えば Donatien Alphonse Francois de Sade(マルキ・ド・サド)という悪名高い住人がいたことでも有名です(サディズムと言う言葉は彼の名前に由来します)。彼は18世紀にこの城に住み、 地元の女性や警察を巻き込んだ一連の事件のあと逃走し牢獄に入れらました。1779年の暴動の際に城は一部破壊されましたが、その後、地元の人々によって 略奪されます。現在はファッションデザイナーPierre Cardin氏によって所有されており、彼が城を復元し、文化的イベントをそこで開催したりもしているそうです。
しかし! 「Lacosteを文化的 St.TROPEZに』という彼のプロジェクトが地元の反対に。地元の人の主張としては、「静かな村の家々を買占めアーティストメッカに変えようとしてお り、彼自身やパリジャン友達のための遊び場としての偽の田園風景を作りあげようとしている」ということです。The Independent紙に記事が載っていたので参考に。
これはちょっと失敗ですよね。せっかくののどかな風景が・・・。パリジャンの間違ったプロヴァンスのイメージ?パリジャンの遊び場にならないことをただただ願うばかりです。
そして、最後にお土産です!まずはオリーブオイル。この地域で一番と評判のオリーブオイル工場Moulin Saint Augustin。ほかにもプロヴァンス名物タップナードや、オリーブの木でできた小物品(パリだと値段が倍します)。
大きなお屋敷の一角が販売スペースに。呼び鈴を鳴らすとおじさんが出てきてお店を開けてくれます。オリーブオイルの試飲ももちろんできます。私たちの選んだのはアーテチョークの風味がするオリーブオイル(おススメ)。
タップナードはパンにのせてアペタイザーなどによく食べます。オリーブの実をつぶしたもので、ノワール(黒)とヴェール(緑)があり、私はヴェールが大好きです。
Moulin Saint Augustin
2800 Route d’Apt D900
84580 Coustellet Oppede
TEL 04 90 72 43 66 WEBSITE www.moulin-saintaugustin.com
そして、Menerbes、Lacosteを含めたLuberon(リュベロン)地域は果物栽培で有名。ブドウ畑のほか、リンゴの木などがそこら中に。いろんなフルーツのパテはどうでしょうか。ジャムとゼリーの間くらいの感覚かな。甘いですがお茶にあいそうです。主人の大好物!
近辺には観光スポットもたくさんあります。私たちの訪れたのはほかにルシヨンとゴルドという村です。
関連ページ
Roussillonルシヨン
Gordesゴルド
関連サイト
Menerbes Tourism プロヴァンスリュベロンニュース
Lacoste TourismLacoste84.com
まだまだおもしろい場所がここLuberonにはあるので何度も訪れたいと思います。週末バカンスという短い時間でしたが大いに楽しめました。またパリでの生活を頑張らなければ・・・。