古い歴史のある建物がここ狭しと並ぶパリ。多くの観光客で常に賑わっています。ところが、そんなパリにもう一つの隠された社会が存在するという。
地下社会
パリの地下には、ローマ時代に街を建設するために石を運び出してできたトンネルが通っており、1700年代からは一部を遺 骨埋葬所として利用しています。
こういった地下内で活動をする社会というのは数十年くらいは存在しているということですが、大きく注目を集め出したのが2004年のことです。
その夏、警察がシャイヨの丘の下(18m)で、400平方メートルもある地下映画館を発見。小さく仕切られた部屋がフランス映画博物館 数メートル下で見つかったのです。
この地下映画館を所有するグループは、自らを『La Mexicaine de perforation』と呼び、地下で映画鑑賞会を開き、毎回の上映に15人から30人が集まっていたといいます。そして、フランス電力EDFは、その 後、電力不正使用として訴えますが、この闇の組織は「捜すな」という貼り紙を残して消えてしまったという。 (以上 Figaroより)
また、The Paris Timesという英字雑誌でも一度大きく特集されていたこともありました。そこには、パリの地下空間での探検がブームになっているという。夜になると、マ ンホールなど秘密の入り口から地下社会へ侵入し、パリの裏側を探検するのだとか。
パリ トロカデロ
シャイヨ宮
こちらはその地下の秘密映画館が見つかった年(2004年)のBBCの記事を訳してみました。
—— 完全な設備を有した地下映画館がパリにある博物館の下で発見された。——
フランスの首都パリには何百マイルも続くトンネルが地下を走っており、それらはもともとこの街を造るための石をローマ人が掘り出す際に 残されたものである。
そしてその地下映画館はパリ16区トロカデロの真下で見つかった。1700年代に、中世の墓地が一杯になってしまったのを機に、パリは このトンネルを死者の骨を埋葬するために使い始めます。
そして、今日、新しい利用方法が発見されることに。
パリの地下で何が起こっているのか調べるためには一つの手段しかありません。その地下墓地に降りてみるのです。Rochereauの Place Denfertにある地下墓地に続く唯一公的に認められた入り口を通って。
いったん地下の中に入ると、そこは湿っていて薄気味悪く、そして閉塞感を感じる。石壁が周りを取り囲み圧迫感を与え、また滴り落ちる天 井は頭上ほんの数インチのところにまで迫っているのです。
こんな場所に楽しみに夜やってくるなんて信じがたいことだ。まして、ここからさらに300kmも離れた場所に映画館を開くなんて。しか し、こういった場所を好む人々が集まるグループが存在し、夜になるとマンホールや秘密の通路を通ってここへやって来るのです。
【秘密の場所】
この地下組織を設立した芸術家や写真家の一人にPatrick Alkという人物がいる。地下映画館の発見はパリ全体の地下組織のほんの一部にしかならないよと彼は言う。
「その映画館を造ったグループは、数多くあるグループの一つだ。」と。
「1980年代に全てが始まり、我々は500、いやおそらく1000人ほどの数だったと思う。芸術家として自分達を表現するためにみん なパリの下へともぐりこんで行ったんだ。」
「我々はそこでいろんな活動をした。ダンスフェスティバル、劇場、芸術展示会など。パリの下で自由な王国を造り上げたんだ。そしてそれ らの場所はかたく閉ざされ、秘密の場所なんだ。」
少なくとも、パリ警察が訓練中にその映画館を偶然発見するまでは。その場所というのは、フィルム博物館を含んだトロカデロ一帯の真下。 カメラでその場所は監視され、誰かが侵入してくると番犬の声を録音したテープが流れるという仕組みになっている。中はウィスキーのボトルと、1950年代 と60年代の白黒映画のコピー。警察が戻ってみると、そこには「我々を捜すな」というメモが残されていたという。
【警察とおにごっこ】
しかし現代のセキュリティ時代において、警察はこういった地下活動家達を潜在的な脅威と捉えているのだろうか。Patrick Alkはnoと答える。
「我々はパリ警察によって脅威とは捉えられてはいない。なぜなら警察はある種のコントロールとしてある人間をここへ置いておきたいの だ。もしここに悪人が入り込んできたら、我々がそれについて情報を流せるからね。」
「我々とならば、鬼ごっこみたいなものだから。警察との関係はそんなに悪くはないよ。」
パリ警察はというと、全く同じ考えではないようだ。彼らの一番の心配は安全である。警察はパリ市民や観光客へ、迷子になったり、トンネ ル内の洪水や崩壊という危険性があるので禁じられた場所へは立ち入らないようと告げている。1993年、ある夜遊びに来た訪問者がこの地下内で迷子になっ たことがる。もう戻ってこないと思った仲間達が彼の写真を額に入れて飾ったこともある。
しかし、そんなことがあっても、彼らは地下でのお祭り騒ぎを計画し続けるのである。そしてその奇妙な熱狂的映画愛好者達については、電 力不正使用の罪で捕らえようとしたのだが、結局その訴えも取り下げられてしまった。そしておそらく地下で電力を使用していた者達はパリの下のどこかでさら に閉ざされた秘密の場所を探し出していることだろう。
以上、BBCより
訳 aki
そして、2007年の出来事。
パンテオン
秘密組織
『Les Untergrunther』という組織が、パンテオンの複数の鍵を入手し、そこで一年以上も居住を構えていたというニュースが伝えられた。 (Figaro 2007年8月)
パリは5区にあるバーで、組織の一人にインタビューをすることになった。煙で充満した一番奥の部屋で、その男性は若い女性と一緒にテー ブルについていた。「彼女は、Lansoという名前で、我々組織のリーダーである。身元を明かすようなことは絶対にしゃべらない。」と、彼が告げる。短く 剃った頭、青く澄んだ目、色あせたジーンズの上に黒のTシャツ、Lazar Kunstmannは 『Les Untergrunther』について語り始める。
彼のポリシーは? 「行政機関に見捨てられた、あるいは、維持する手段のない世襲財産の目に見えない部分を修復すること。我々は、お役 所でさへ知らない場所にも関与する。」と、Lazarが述べる。
数ヶ月前、パンテオンの鍵を8人のメンバーが手に入れ、一年以上もそこにこっそり住み着いていたということで噂の中心となった。部屋や 図書館、そしてバーまでをも整備し、建物の上層部で快適に過ごしていたそうだ。
丸天井に架かる古い大時計は、1850年Wagnerモデルで、40年以上とまったまま。さびがつくほど放置されていた。「もし我々が その時計を救いたいと思うのなら今しかない、と思い、我々はそこへ侵入した。」と、Lazarは語る。彼らがその時計を修理するのに何百時間もかかるだろ うと推測される。
教会、地下、公共施設、ビルの屋上、都市探索賛同者は入りにくい場所に冒険心を駆り立てられる。パリの網の目のような地下や入り組んだ公共の建物が、彼らに絶好の場所を提供しているのだ。
そしてそこには約12のグループが存在するという。彼らは常に控えめで口がかたく、何よりもパラノイアである。インターネットもなく、 仕切られた場所での活動、電気を介さないコミュニケーション手段、偽名を使うこと…などなど、混沌としたものが存在し、理解に苦しむ。警察もこの課題 に取り組みの姿勢を見せ、テロなどの発展につながらないよう祈っている。
「大体、7人から15人くらいの構成メンバーでグループは存在している。ある者は看護婦、建築家、ジャーナリスト、あるいは小学校教員。そしてどのグループにも、警報システムの専門家か錠前製造の専門家がいる。」 Lazar自身もジャーナリストである。
以上、Figaroより参考
訳 aki
自分の暮らしている地面の下に別の社会が存在するなんてちょっと不気味な感じがしますが、パリっていろんな ところに通路やスペースがあって、そんなこともありえるかなあとも思ったりします。うちのアパートの建物内にも、何の部屋か分からないドアがあったり、 昔、タイトルは覚えていませんが、地下鉄内に人が住んでいるというフランス映画を見たことがあります。それにしても、ただの好奇心から犯罪へつながることはとても危険なことです。家を飛び出した少年達がこういった場所で共同生活をしているというニュースも聞きます。
パリと地面を挟んで反対側に存在する世界、そして町の意外な死角に潜む謎の社会。何かの映画やドラマで出てきそうな話ですが、本当の話です。