魚が好き

語学を勉強していて、<これはよく知っている>とか<これは簡単>と思って意外と見逃していることが多い。英語でもフランス語でも。そしてそんな部分を発見するのがとてもおもしろい。

ある日、「私は魚が好きだ」と表現がしたかったので、J’aime les poissons.と言ったところ、こんな発見がありました。

・STEP1
aimer の動詞を使う際、その目的語にくる名詞には一般的に定冠詞(le,la,les)をつけます。ルールとしては、可 算名詞(数えられる名詞)には複数定冠詞 les非可算名詞(数えられない名詞)には単数の定冠詞 le,laが使用されます。
J’aime les chats. (私は猫が好きです)
J’aime le cafe.  (私はコーヒーが好きです)
J’aime la musique. (私は音楽が好きです)

数えられる名詞の場合、もし目の前に複数の猫がいれば J’aime les chats. ということもあります。でも次のような名詞の場合、意味に違いが出てくるので注意が必要。
・STEP2
「私は魚が好き」
と言う場合、

J’aime le poisson.
(1) poissonは非可算名詞として扱われ「食肉用の魚」ということをあらわしています。ですから、好きは好きでも「食べる」のが好きという意味になります。
(2) あるいは、目の前に一匹の魚がいて、「それをペットとして飼いたい」と思って発言されるかもしれません。

J’aime les poisson.
一方こちらは可算名詞として扱われ「ペットとして飼うのが好きだ」という意味を表しています。
fish

・STEP3
「魚」という単語
は使い方が本当に面倒くさい単語です。フランス語でも英語でも。

【フランス語の場合】
(1) 魚の群れを多数が集まったものとしてdes poisson、集合体とみて du poissonと言うことができます。
Il y a des poissons/du poisson dans ce lac. (この湖には魚がいる)
Je prend des poissons/du poisson. (魚をとる)

(2) そして上で述べたように非可算名詞として扱うと「魚肉」という意味になります。
Je mange du poisson. (魚を食べる)
Je prefere le poisson a la viande.  (肉より魚のほうが好き)

【英語の場合】
(1) 可算名詞では魚が一匹でも複数でもfish はfish。形が変わりません。
I have a fish. (魚を一匹飼っている)
I have many fish. (魚をたくさん飼っている)

しかし、種類がはっきりしているような場合はfishesを使います。
I caught three small fish(es). (3匹の小さな魚を捕まえた)
I saw such fishes as cod, mackerel, and blue fish. (タラ、サバ、アジなどの魚(類)を見ました)

(2) そしてフランス語同様「食肉」用の魚は不可算名詞です。fishは、この場合数えません。
I like fish better than meat.  (私は肉より魚のほうが好きです)

fish

・STEP4
ちなみに【種類全体を表現】する際の、英語とフランス語比較してみると、

J’aime les chats. (私は猫が好きです)を英語ではさらに3種類、
1. I like cats.  2. I like a cat. 3. I like the cat.
1.が一番一般的で、英語では可算名詞の複数形をとります。2.も一般的。3.になるとちょっと格式的になってしまいます。ちょうどフランス語の定冠詞 (le,la,les)にあたる英語のtheですね。この3.のケースは一般的に工業製品や発明品、楽器などに主に使われることが多いんです。例えば、
Who was the telephone invented by? (電話は誰によって発明されましたか?)
We play the piano. (私達はピアノを弾きます)

また数えられない名詞の場合には何もつけないのが英語でのルール。
J’aime le cafe.  (私はコーヒーが好きです) は、 I like coffee.
J’aime la musique. (私は音楽が好きです)は、 I like music.

そこにもしtheをつけてしまうと「その…」という限定がかかってしまいます。
I like the coffee that he prepared. (彼の用意してくれたそ のコーヒーが好きだ)
I like the music that they creat.  (彼らの創り出すその音楽が好きだ)

と、英語のルールはフランス語と全く異なります。こういうわけで、「私は魚が好きだ」とフランス語で言う際に、英語のルールを当てはめ て複数形で言ってしまったところ、思わぬ発見があったということです。