農業の国フランス。広大な土地を利用してさまざまな野菜や穀物が作られています。そしてスーパーに並べられる野菜はどれもピカピカ。こういった大量生産の裏に農薬技術が隠れていることはどこの国でも同じですよね。最近はBIO(ビオ/無農薬)の製品も見かけるようになりましたが、気に過ぎるのもどう かと思ってしまいますし。ですから私達は、マルシェで見つけた新鮮な野菜を売る店でなるべくたくさん野菜を買うようにして(これが本当においしいし、季節 によって出る野菜も違う)、そしてスーパーで買ってきたものは丁寧に洗うようにしています。
こちらはマルシェで買ったトマト。つやがって甘い。
それに、農薬というのは野菜から直接体内へ侵入するばかりではありません。このページではフランス、特にパリ周辺に見る農薬による環境 問題について紹介したいと思います。
【農薬による大気汚染】
Airparifによって発表された研究によると、パリ上空の大気圏は約30種類の除草剤、殺虫剤そして除菌剤によって汚染されているということです。
殺虫剤がパリの人口密集地に雨に混ざって降ってくるということは以前から確認されていたことだが、Airparifの発行する月刊誌の中で新たに首都圏の空中にも殺虫剤が混ざっていることが明らかにされた。それも農業地域と同じくらいの濃度の数値が割り出され、さらに合計約30種類の分子が5箇所の採取地域から確認された(Pari, Les Halles ; Bois-Herpin(Essone) ; Gennevillier (Haut-de-Seine) ; Challes et Coulommiers (Seine-et-Parne)。
2006年の3月から6月、農作業で一番大事な時期において、農薬汚染に関する調査キャンペーンが行なわれた。その調査結果のグラフか ら、大気中の殺虫剤濃度のピークと農作業のスケジュールとが完璧に一致することが分かった。4月上旬には殺虫剤(pesticides病原菌を殺す)が、 少しして別の種類の殺虫剤(insecticides虫を殺す)、そして除菌剤(fongicidesカビを殺す)の順と続く。これらのサンプル採取は空 気を吸引しフィルターに通すセンサー機器を使って実行されました。
Airparifは、首都中心と周辺の耕作地域との間にはほとんど違いがないと認めています。パリ郊外Bois-Herpinで最大 29種類の殺虫剤が、それに対し、Hall(パリ中心)の駅では19種類の殺虫剤が確認されました。間違いなく、都心エリアの方が濃度は薄まりますが、汚 染は現実に起こっています。Ile-de-France(パリの所在する県)で毎年3,200トンの殺虫剤が使われており、耕地1へクタールにつき 2,1kgに合致。フランスは世界第3番目の農薬使用国である。
ある殺虫剤研究者は、≪パリ中心の大気中に農薬が飛んでいるのは驚きではない≫と強調します。パリ人口密集地は広大な農業地帯に囲まれており、いくつかの地域は風が吹いてくる方向にある。そうした地域からさまざまなガスや化学物質を運ばれてくる可能性がある。実際、農薬散布時期には25 パーセントから70パーセントの物質が大気中に気化しガスとなる。それらの大きさは「ナノ」メートルで表され、そしてそれらのガスは肺の中に侵入し、簡単に血液中に通過する。
また、都市エリアでは、造園のため、特にバラ栽培のために使用される薬剤物質が確認されており、その物質はパリ周辺においては見つかっ ていない。しかしながら、これにはほんの10パーセントの有害物質しか含まれていない。≪対象を間違えたり、非農薬用途についての問題を持ち出してはいけない≫と。汚染は何よりも農薬が原因となっているのだ。
殺虫剤はそれぞれに特徴を持っている。あるものは揮発性が強く、使用された時にだけしか大気中に現れないものもあり、アブラナやヒマワ リの栽培に使用される除草剤のように、一年中空気中に潜んでいるものがある。
以前Orlean(オルレアン)で同じような調査が行なわれたが、今回Airparifによって殺虫剤の引き起こす衛生問題が新たに提 示された。水の中にも、食品の中にも、そしてまた毎日人々が吸っているものにも考慮しなければならなくなるだろう。まだまだ調査されなければならない殺虫 剤のリスクというのは評価がし難いものである。Airparifの研究調査はla Drass d’Ile-de-France のPlan Cancer(癌研究)の一環として、また Essone とval-d’Oise県、そして Ile-de-France Environnement 研究所などの支援を受けて実行された。
以上 2007年6月フィガロ紙より / 訳 aki
どこの大都市も、大気汚染は頭の痛い問題ですね。こんな所に農薬が飛んでいるなんて驚きです。食べるものだけに注意していても、普段 吸っている空気自体汚染されているんですから大変なことです。でも、健康のために農薬をやめたとしても、きっと今の世の中自給自足できなくなってしまうのでは。どこで流れがくるってしまったんでしょうね。
自分個人の生活スケールではなく、自分の国、あるいは世界スケールで、物事を考えて行動しなければならないですね。「BIO(無農薬) 野菜を買って食べてれば健康でいられる」という考えではなく、どうしたら汚染問題が解消されるかということにも頭を使わなくては。
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