Category Archives: フランス語レッスン

窓際族

窓際族とは、職場で重要な仕事も与えられず窓際で外を眺めては時間をつぶしているような社員。こんな風景って日本だけと思っていましたが、フランスにも存在するらしい。

フランスでは mettre ~ au placardという表現で表されるそうです。 placard(プラカール)とは英語でいうcloset(クローゼット)、日本語だと戸棚だとか押入れにあたります。

つまり、あまり能力のない社員はクローゼットの中に入れてしまえということ。

フランス社会でもnepotisme(ネポティズム/縁者びいき)つまりコネが多いそうで、つい最近テレビでも、日本でいう『親の七光り』は重要なのかというような趣旨のプログラムをやっていました。能力があれば文句はないようですが、能力もないのに名前だけでポジションを与えられると周囲との協調が取れず、フランスではプラカールにしまい込まれてしまうようです。

いろんな静けさ

外国語を学習していると、日本語が新鮮に感じることがあります。特に日本人と「おと」のつながりは深く、日本語の中にどれだけの擬声語(擬音語/擬態語)があるかを見ればよくわかると思います。そしてそんな音でできた日本語を考えるとき、日本語って面白いなあと感じるわけです。

擬音語はものが発する音を表したもので、

心臓がドキドキする。
ガラスがガチャンと割れる。
風がビュービューと吹く。

おもしろいのは擬態語。音を出さないものについて字を当てて表現する。

ポカポカの日だ。
頭がガンガンする。
バラバラに散らかっている。

外国人にこういった日本語を教えると結構面白がってくれます。ツルツル、パンパン、トントン、ピョンピョン、カンカン、ザーザー、テクテク、カサカサ、ドスンドスン、 時に、ボーっと、シーンと、ポワーンと・・・・、なんだこの日本語!?と。

もちろん英語やフランス語にもonomatopoeiaやonomatopeeと訳語があるので、こういった表現(擬声語)は存在します。ただ日本語の擬声語の数は比べ物にならないくらい多い。

そうした音に対する人の捉え方をみると、言語の違いだけではなく、文化や習慣の違いも見えてきます。日本人は音に対してとても敏感だと思います。

では、いろんな国の「静けさ」をあらわす表現を見てみましょう。

まず日本代表:松尾芭蕉 『古池や蛙飛び込む水のおと』
この俳句では、蛙がケロケロでもなクワックワッでもなく、古池に飛び込ませることで「静けさ」の音が伝わってくる素晴らしい作品です。蛙の擬音語ではなく、蛙が飛び込んだときに水がポチャッとなるイメージを頭の中に描くので水のはじく擬音語ですね。その音は俳句の中には文字として記されていませんが、共通の文化を持っている人間ならばそこからジワリと静けさが浮かび上がってくることでしょう。

さてお隣、中国代表:『推敲』文章を何度も練り直すという意味ですが、その由来を見てみると;
唐の時代、 賈島という人物が「僧は推す月下の門」という一句を口ずさんだ後、「推す」のがいいか「敲く(叩く)」のがいいかと悩んでしまった。そこで漢詩の大家でもあった韓愈が、「それは敲く方がいいだろう、月下に音を響かせる風情があってよい」と言ったそうです(ウィキペディアより)。日本と同じく、音を発することによって周りの静けさが浮かんでくるようですが、日本のように自然が生み出すものではなく、人間の発する力強い音というのが対照的に感じます。

ヨーロッパはフランス代表:《Un ange passe.》 「天使が通る」
音ではありません。 天使が通るのです!でもその静けさが伝わってきますよね。そう、日本語でいう「しーん」とした一瞬に、目の前を天使が通過して行きそうです。教会の中のあの厳かな空間を『静けさ』のイメージとして持っているんでしょうね。こちらも平和そうな静けさが感じられます。

こうして並べてみると、同じ『静けさ』を表現していますが、文化によって『異なった静けさ』が見えてきます。

でも、フランス人だって音を使って静けさを表すこともありますよ。 さあ、どんな『静けさ』が浮かんできますか?

《On entend voler une mouche.》 「ハエの羽音が聞こえてくる」くらい静か。うん、これも周りが「しーん」としていますね。

ヴァジスタース!

ヴァジスタース! なんだかかっこいい響きじゃないですか?これは何語だと思われるでしょうか。フランス語を紹介しているページなのでフランス語なのですが・・・フランス語らしくない音ですね。

まずは、フランス語としてのヴァジスタース=vasistas: 辞書には開閉式小窓とあります。ぴんとこなかったので主人に尋ねたところ、彼がイメージしたのは屋根についている開閉式小窓。

ヴァジスタースとは、定義づけると、普通の窓より小さく開閉扉になっていて、部屋の明り取りや換気の機能を持っているそうです。

そしてその言葉の由来とは、

なんとドイツ語から来ていたんですね。ヴァジスタース! うん、ドイツ語っぽい。

ヴァジスタースと発音するこのフレーズ、ドイツ語で書くと 《Was ist das?》、フランス語で言う《Qu’est-ce que c’est ?》、英語で言う《What is it?》(英語の音がとても近いですね)。そのまま訳すと「それは何ですか?」となってしまいますが、この場合は「何の用ですか?」と訳すのがいいですね。18世紀にドイツ人によって使われていた決まり文句で、ドアを開ける前に窓口を通してフランス人訪問者の身元について確認していたのが始まりだそうです。また1798年のアカデミーフランセーズ辞書第5版に初めてvasistasの言葉が現れているそうです。

そしてこちらドイツのヴァジスタース(wikipediaより画像):もちろんドイツ語ではKampferfensteとちゃんとし呼び名があります。ドアについている小窓が由来の元になっているんでしょうね。現在では、上でも説明したように明り取りのために付け足された窓の上の部分などもヴァジスタースになっているようです。

ヴァジスタース、言葉の響きもいいですが、なかなかおしゃれです。

トランペット

トランペットはフランス語ではtrompetteトロンペットと呼びますが、トロンペットという音を聞くともう一つのフランス語tromperトロンペ(騙す、欺く)という言葉が頭に浮かびます。何か必ず関係があるはずと、主人に語源辞書で調べてもらったところ、trompetteの動詞にあたる trompeter トロンペテの項目で、昔はそのままストレートに「らっぱを吹く」と言う意味で使われていたものが、何かを「吹聴する」という意味に発展していったとあります。

そして、もう一つおもしろいのは、 trompetteのもう一つの意味に「ホラガイ」があります。そう、日本語でいう「ホラを吹く」は「騙す」と言う意味ですね。英語でもTriton’s trumpet「トリトンのトランペット」と呼ばれます。トリトンと言うのはギリシャ神話に出てくる海の神で、波を立てたり鎮めたりするためにほら貝をラッパのように吹きます。そのほら貝の大きな音は、巨人たちが「野獣のうなり声だ」と勘違いして逃げ出すほどおそろしいものであったそうです(ウィキペディアより)。

一方、日本語の「ほらを吹く」の語源は仏教から。サンスクリット語の「シャンカ(螺貝)」は、楽器として用いられ、戦場での出撃合図にも使われていました。仏教ではそのシャンカを吹くことを仏の説教に喩えたようです。つまりお釈迦様の説法。 釈迦が法(教え)を説くことを「法螺を吹く」と言い、それが「釈迦のような偉ぶった説教をする」となり、さらには「大げさなことを言う」、「うそをつく」という意味に変化していったそうです(慣用句辞典より)。

またフランス人のジェスチャーの一つで、ラッパを吹くまねをすると、うそをついているということを暗示するようです。

tromperie 「ごまかし、虚偽」

trompeur 「人をあざむく、偽りの」

tromper 「だます、欺く」

英語にも He blows his own trumpet. と言って、「ほらを吹く」と表現できますし、文語ですがtrumpery と言うと「見掛け倒しのもの、くだらないもの」という意味があります。

最後に、trompe-l’oeil 目をだますで「騙し絵」

シルエット

辞書にある重要ランクの仏単語を抜き出し続けてもうそろそろ半年以上経ちそうです。Aから始めてやっとSにたどり着きました。だんだんフランス語の単語が頭の中にインプットされてきたような・・・。普段は英語の生活のため、無理にフランス語を入れてやらないと吸収が遅いんです・・・。

それにしてもページ数1,500番台までくると、おもしろい単語がたくさんあったなあと過去を振り返ることがあります。最近の発見をご紹介しましょう。

Sのカテゴリーから、単語silhouetteシルエット。 日本語でもおなじみの単語ですね。日本語だと影絵と訳され、あるいは光を使って浮かび上がった風景や人物の輪郭などを指します。

さてそのページに括弧で小さな説明が加えてありました。

18世紀の政治家Etienne de Silhouette。シルエットって人の名前だったの!とビックリ。で、どんな人?と興味をそそられ、調べることに。

まず、Etienne de Silhouette エティエンヌ ドゥ シルエット(1709~1767)はルイ15世統治下の財務総監だったそうです。

父のArnaud de SilhouetteがBiarritz(バスク地方)から移動してきたリモージュで彼は生まれ、財政経済を学び、また英国経済を学ぶため一年ロンドンに滞在したこともありました。

Alexander Pope (イギリスの詩人)などの作品をフランス 語に訳すなど活躍。ポンパドゥール夫人(ルイ15世の公妾)から財務総監の地位を与えられる。彼の任務は国の財政赤字を食い止めると同時に、対英国七年戦争のため財政を強めること。王室による浪費も削減させ、自由貿易を推奨するため、いくつかの税を取り除き、統一したフランス市場において働くあたらしい税金制度を導入。

と、このよう生涯財務に関わった人物のようで、彼自身も切り絵などのシンプルなお金のかからない肖像を好んだそうです。そして、それが「シルエット」と呼ばれるようになったと。

またこのSilhouetteという名前はバスク語の苗字Zilhuetaをフランス語読みに変えたものだそうです。

そういえば私たちの身の回りにもシルエットがたくさん。

以上参考ウィキペディア

この言葉がバスク語から来ていることも興味深いですね。だからちょっと変わったスペルなんだと納得。さあ、あとTUVWXYZのカテゴリーが残るのみ。どんな発見があることか・・・。