学生時代まだ英語ができなかった頃のこと。アメリカでレストランのメニュー読解に悪戦苦闘をしていました。そこで読めた英語が、hair of angel「天使の髪の毛」。 どんな料理が出てくるとも知らず、それくらいしか読める単語がなかったので注文をすると、本当に天使の髪の毛のような細いパスタが出てきました。味はそん なに感動はしなかったのですが、その名前にとても感動したのを覚えています。
そして、フランス語にもちゃんとあります。「天使の髪の毛」cheveux d’ange (シュ ヴーダンジュ), cheveux =髪の毛です。こちらではスープなどに入れて食べます。髪の毛をスープにと思ったら「うっ」となりそうですが、天使ですからね。日本のそうめんを見せたらcheveux d’angeだねと言われたことがあります。またおもしろいのは、cheveux d’angeと いうと、クリスマスツリーのモール飾りのことも指します。なんとなく想像してみてくださいね。天使の髪の毛を。
cheveux d’ange 極細パスタ
ではここからun cheveu(単数)/cheveux(複 数)「髪の毛」を使った面白い表現をいくつかご紹介していきましょう。
Il arrive comme un cheveu sur la soupe. 直訳すると「彼はスープに入った髪の毛のようにやって来る。」つまり「間の悪いときにやって来る。」話し言葉ではcheveu自体に厄介、面倒、不都合という意味があり 『Il y a un cheveu. 』で「厄介なことになった」と訳すんだそうです。 嫌ですよねスープの中に髪の毛なんて。本当食べる気が失せるくらい厄介なものです。
J’ai mal aux cheveux. 「髪 の毛が痛い。」さてどんな時に髪の毛が痛くなるでしょうか。お酒をよく飲まれる方記憶にないですか。「飲みすぎて頭が痛い。」と解釈します。もう頭どころ ではなく感覚的には髪の毛にまでに響くようなそんな感じでしょうか。
ちなみに英語でthe hair of the dog 「犬の毛」というと「二日酔いをなおす迎え酒」になります。
Elle a un cheveu sur la langue. 「彼女は舌の上に髪の毛が一本ある(口の中に髪の毛が入っている)。」 では口の中に髪の毛が一本入った状態で話すと どんな感じになりますか。「舌足らずなしゃべり方」になりませんか。
Il coupe les cheveux en quatre. 「髪の毛を4つに切る」つまり「ものすごく細かいところにまで気にする」とか日本語で言う「重箱の隅をつつく」でしょ うか。
ちなみに英語ではsplit hairs 「髪の毛を一本一本割る」 から。
Il fait dresser les cheveux sur la tete. 「髪の毛を頭の上で立たせる」 想像してください。そうこれは「(恐怖や怒りなどで)髪の毛を逆立たせ る」という意味になります。
これはちょうど英語のmake his hair stand on end「ぞっとさせる」と重なりますね。また「立たせる」だけでなく「髪の毛をカールさせる」こともできます。make his hair curl「おびえさせる」。keep your hair on 「髪の毛を立たせず、頭に密着させておく」 と「落ち着け、怒りを抑えろ」という意味。let your hair down「髪をなでおろす」と 「落ち着いたり、打ち解けたり、くつろぐ」となります。 マンガのようですね。
Il se fait des cheveux blancs. 「髪の毛が白くなる」=「(髪の毛が白くなるほど)心配する」
Ils se prennent aux cheveux. 「髪の毛をつかみ合う」=「つかみ合いのけんかをする」
そして最後に「間一髪~」という表現。英語でもフランス語でも髪の毛というのはとても細いという意味を共通して持っています。
【フランス語】 Cela ne tient qu’a un cheveu~ 直訳すると「それは髪の毛一本しかつかまない」
・Cela n’a tenu qu’a un cheveu qu’il soit ecraze par un camion. 「彼は間一髪トラックにひかれるところだった。」
【英語】 ~by a hairbreadth 直訳すると「 髪の毛の幅で」 breadthは broadの名詞で「横幅」、ちなみに widthはwideの名詞で「幅、横幅」。薄型W(ワイド)テレビでよく使われますよね。
・He escaped death by a hairbreadth. 「彼は間一髪死を免れた。」
*アクサンは省略してあります。