Category Archives: フランス語豆知識

フランスのどんぐり

秋になると山や森ではどんぐりが道の一面に。フランスでも同じです。でも、確か日本で見たどんぐりは長細かったような気が・・・、フランスのどんぐりはこまのようです。ぼうしも椎茸みたい。

面白がって集めながら、《glandグラン=どんぐり》がたくさんだ!と言っていたら、主人が「そんなにgland、glandと言わないで、glandはフランス語で怠け者っていう意味もあるんだよ」と。うーん、なんとなくイメージがわくようなわかないような・・・。何もしないでずっと地面に横たわっているからでしょうか。フランスのどんぐりは怠け者だそうです。

シルヴァン

フランス語の新聞を読む際は、だいたい英語(少し上のレベルの)を元に推測しながら大まかな内容を把握できるのですが、たまに『なんだこの単語!?』と思わせるような単語に遭遇することがあります。

最近見つけた単語でsylviculteur(シルビカルトゥー)というフランス語あります。見た瞬間『なんだこの単語!?』と。

まずこの単語を2つの部分に分解。 sylvi+culteur

culteurとはculture(カルチュール)から来ており、日本語でもカタカナでよく使う英語のカルチャーですね。でも「文化」という意味しか知らないとちょっと足りません。英語でもフランス語でもこのcultureカルチャーには重要な意味がまだ残っています。「教養」、「耕作」、「栽培」、「養殖」など。

Elle de la culture. 彼女は教養がある。
la culture de la vigne ブドウの栽培
la culture des huitres カキの養殖

cultureのつく他の単語例:

api(ラテン語でミツバチの意)+culture=apiculture 養蜂
pisci(ラテン語で魚の意)+culture=pisciculture  養魚  ***ちなみにpiscineは「プール」という意味がありますね。
viti(ラテン語でブドウの意)+culture=viticulture ブドウ栽培  ***英語ではviniculture フランス語でもvinワインですね。

同じような考え方で、

agriculture 農業
horticulture  園芸
sericulture 養蚕
aviculture 鳥類飼育
arboriculture 樹木栽培 ***arbre木ですね。
pomiculture 果樹栽培 ***pommeりんごですね。
floriculture 花の栽培 ***fleur花ですね。
aquaculture 水産養殖 ***aquarium水族館ですね。
ostreiculture  牡蠣養殖
monoculture 一毛作

以上知っている単語ですが、英語もそのままです!

さて一方sylviの方ですが、これがまたおもしろいルーツを持っているのです。辞書を引くとsylviはラテン語で「森」の意を持つとあります。sylvi+culture=森+栽培という形になり、意味としては「林業」「植林」ですね。単語の語尾が変化してsylviculteurとなると人を指し「植林者」「林業従事者」とあります。

さらに、この「森」を指すsylviの部分ですが、シルウアヌスというローマ神とも関係があります。森と野の神で自然の豊かさを象徴しているそうです。それを表記するとSylvainシルヴァン。ラテン語の「森」という意味のSilvaとギリシャ語のulaiから来ています。

英語でsylvanを調べるとやはり「森林のある」「森林に住む」「樹木の茂った」とあり、名詞扱いにすると「森の精」とあります。

フランスでSylvainシルヴァンと言えばもうひとつ、男の子の名前でよく使われていますね。女の子はSylvieシルヴィー。これからこの名前を聞くたびに頭の中に「森」が浮かんできそうです。素敵な名前ですね。

腹話術

知っていてもたぶん使うことも、聞くこともまれかもしれませんが、フランス語で腹話(術)をventriloquie(ヴァントリロキ)と言います。

テレビであるコメンテーターの口の動きと声が腹話術のように見えて、このおかしさを主人になんとか伝えたいと思ったところから始まりました。

さて、このなんだかややこしい単語ですが、このひとつの単語からいろんな単語が覚えられます。では単語の分析開始です。

ventriloquieを2つの部分に分けると、ventri と loquieになります。
ventri はventre(ヴァントゥル)で「腹」という意味で有名ですね。

loquieは loquace(ロキュアス)「話好きな/おしゃべりな」、 loquacite(ロキュアシテ)「話好き/おしゃべり」   (*アクサン省略)
さらには、locution(ロキュション)「句/熟語/慣用語法」、locuteur(ロキュトゥール)「話し手/話者」、  locuteur natifで「ネイティヴスピーカー」になります。
interlocuteur(アンテルロキュトゥール)にすると inter「間/互いの」という意味が追加され、「話し相手/対話者」となります。

allocution(アロキュション)「演説/スピーチ」
colloque(コロク)「シンポジウム/討論会」

ここまで分析すると、一目瞭然。フランス語のventriloquieはまさに日本語の「腹話」と一致している!

さらにさらに、ルーツが分かれば英語もまったく同じ。

ventriloquism 「腹話術」
ventral「腹の、腹部の」

locution 「話し方/言葉遣い」、(格式的)「慣用語法/イディオム」
interlocutor「対話者/対談者」

colloquial「口語の/話し言葉の」
colloquialism「口語体/口語表現」
colloquium「共同討議」
coloquy(格式的)「会談/会話/討議」

さあ、これであなたもトライリンギャル!

仏サラリーマン

フランスではサラリーマンをsalarieサラリエと言いますが、フランスのサラリエも日本のサラリーマンと同じように毎日の通勤や仕事に疲れている様子。そんなフランスのサラリエたちの生活を表す表現が、

Metro, boulot, dodo メトロ、ブロ、ドド

「地下鉄乗って、仕事して、帰ったら寝るだけ」といったところでしょうか。

businessman

Metroはそのままフランス語で言うところの地下鉄/メトロですね。
Tu as un metro de retard.で「最近の事情に疎い」と私の辞書にはありましたが、主人いわくTu as un train de retard.だそうです。

boulotは話し言葉で仕事という意味。普通はtravail=仕事で習いますが日常会話ではboulotの方がよく聞こえてきま す。
Tu es boulot boulot.で「仕事一途」と私の辞書にはありましたが、主人いわくtravailleur「働き者」と言うのが普通だそうです。

dodoは幼児語で「ねんね」という意味。dormirドルミール(寝る)から来ています。

どこの国でもサラリーマンはお疲れのようですね。でもフランスはながーいバカンスがあってラッキーです。

*アクサンは省略してあります。

大中小

フランス語は英語と同じ語彙をたくさん含んでおり、なんだか読んでいるとだいたい意味が分かってしまう(厳密には英語がフランス語から言葉を拝借しているのですが)。ですから英語のちょっと上のレベルの単語をたくさん知っていれば、多くがフランス語からきているものだと気づきます(厳密にはラテン語 ルーツ)。

例えばフランスの日常生活で:

レストランで大きなお皿にたくさんお料理がのって出てきました。そこで、”Copiuex(コピユー)!”と誰かが言っているのを聞い て、あー英語のcopious「豊富な」ね、と思うのです。フランス語でも「たっぷり」とか「豊富」という意味を持っています。

あるいは、テレビのニュースを見て”Quel lamentable(ケル ラマンターブル)”と誰かが言っています。なーんだ、フランス語も同じじゃない、と思うのです。英語でも lamentable 「情けない、遺憾な」。ただ発音が違う。フランス語は後ろのラーブルに、英語は前方にアクセントが来ます。このアクセントが曲者で最近私の英語はフランス 語に引っ張られぎみ・・・。

しかし!いつも意味が一致するというわけではありません!ここが落とし穴。

例えば、

prejudice (プレジュディス)、これは英語では「偏見」という意味なのですが、フランス語では「損害」という意味になってしまいます。フランス語では prejuge(プレジュジェ)が「偏見」。こういった単語がややこしいのです。

英語でinjure(インジャー)って「けがをさせる」だけどフランス語だと(アンジュール)となり「ののしり言葉」となってしまう。

そして先日、主人に英語のテストをしてやろうと質問したのが次の句です。皆さんの英語力も試してみてください。

A small medium at large

どんな意味だか分かりますか。smallは初級レベル、「小さい」ですね。次中級レベル mediumの意味は?「中間、中位」の意味しか出てこないと初級レベル。他に「媒介物」、中間を取り持つというところから「巫女、霊媒師」という意味に 発展していきます。ここでは後者の霊媒師の意味を取ります。するとa small mediumは「小柄な霊媒師」という意味が出てきます。さて最後に上級レベルat largeの意味。ニュースを読んでいたりすると見かけることがあるかもしれませんが、「(犯人などが)逮捕されていない」という意味を持っています。つ まり、「小柄な霊媒師逃走中」というニュースの見出しになります。単語だけ見れば大中小という単純なものですが、意味が広がります。

さてフランス人の主人、でも英語はよくできます。ただ私と同様フランス語と英語の間で引っ張り合いがあるのです。

a small mediumはばっちり。ちなみにフランス語で「中間、中位」というとmoyen(モワイヤン)ですが、mediumはずばり「霊媒」を指します。そして at large、これがau largeに邪魔されてしまうのです。フランス語でAu large(オー ラルジュ)!と言うと「近寄るな、離れろ」となってしまうのです。「小さな霊媒師、あっちへ行け」???

うーん、年をとるにつれて記憶力がついていけるのかどうか・・・。頑張ります。

*(注)アクサン記号は省略しています。