Category Archives: フランス語レッスン

青緑黒

うちの主人が小さい頃の話です(南仏での話し)。学校では先生を尊敬するため(?)、大人の使う黒いインクは子どもには禁止で、生徒は必ず青いインクで文字を書かなければならなかったそうです。そしてもう一つおもしろいのが、その青で書いた文章で、間違った箇所を直す場合には緑を使わされたそうです。(フランスの他の地域については分かりません)

日本であれば黒で書いて赤で直すのが一般的だと思うのですが、なぜ緑なのか。主人もよく分からないと言っていました。おもしろい習慣です。

そこでちょっと色についてフランス語を調べてみたところおもしろい発見が。

青はbleu(ブル)「新入り、新入生」とうい意味があり、Tu me prends pour un bleu. 「君は私を新米扱いする」となります。

緑はvert(ヴェール) :「熟していない」で、fruit vert「熟していない果物」。英語でもgreenには「未熟の、世間知らずの」という意味があります。

そうするとなんとなく色のイメージがわいてきませんか?たぶん子どもは新参者、そしてまだ間違えているようでは未熟なのでしょう。大人の使う黒いインクが使えるまで訓練しなさいということでしょう。

と、主人に説明すると、「なるほどー」と言ってました。本当かどうかは知りませんが(?)。

そのほかの色についても、おもしろい表現を挙げておきます。

赤/rouge(ルージュ): そのまま「口紅」「赤ワイン」という意味の他、「赤字」「真っ赤になって怒る」もやはりフランス語でも赤を使います。Il est dans le rouge.「彼は赤字だ」、 Il s’est fache tout rouge. 「彼は真っ赤になって怒った」。

黄/jaune(ジョーヌ): rire jaune 「作り笑いする」

茶/marron(マロン):マロンは「栗の実」ですね。栗の実を受ける  recevoir un marron で「げんこつを食らう」。

黒/noir(ノワール): 白から黒にいく aller du blanc au noir  で「すっかり意見を変える」。

白/blanc(ブラン):白い夜を過ごす  passer une nuit blanche  で 「眠れない夜を過ごす」。

青/bleu(ブル):日 本語でいう「青あざ」はそのまま青。 Je me suis fait un bleu au genou. 「ひざに青あざを作った」。

緑/vert(ヴェール): 緑色の年 les vertes annees で「青春時代」、青い小人  Les petits hommes verts で「宇宙人」。また緑色のナンバー numero vert  で「フリーダイヤル」です。

ピンク/rose (ローズ):「バラ」という意味ですね。la vie en rose で「バラ色人生」

紫/violet(ヴィオレット):こちらは「スミレ」の花です。

オレンジ/orange(オランジュ):信号機の黄色はこちらではオレン ジ。詳しくは生活・文化フランスの色へ。

お金がない時には

「人の噂も何日まで?」のぺージでもご紹介した le quart d’heure「15分」にはもう一つおも しろい話があります。

フランスのルネサンスを代表する物語作家François Rabelais(フランソワ・ラブレー)という人物がいます。彼は当時の教会をはじめとするさまざまな権威に対し批判をし風刺のきいた作品を書き上げま した。その事で、彼は迫害を受け、フランス国内を転々とする生活を送ることになります。

フランス語には、このラブレーの名前からそのままrabelaisで「奔放で風刺のきいた」という意味を表します。

また彼の作品にはさまざまなユーモワがちりばめられていますが、彼はそれを自分の実生活でも実践したことがあります。ある日、リヨンで彼はお金を一銭も持っていなかったのですが、何とかパリに戻りたいと願っていました。そこで砂糖を包んだ小さな袋を持っていたので、それを「王を殺すため の毒」だといって、警察に捕まりパリへと連れて行かれることに。それもただで。

それをルイ1世はとても滑稽だと笑い、それが元で現在でも「お金がないけれど支払わなければならないという状況」を示すのに、le quart d’heure de Rabelais とフランス語では言っています。

rabelais
François Rabelais

人の噂も何日まで?

フランス、アメリカ、日本、さて人の噂は何日まで?

日本では、「人の噂も75日」と言うので、75日。
アメリカでは、a nine days’ wonder (9日間だけの驚き)と言うので、9日。

そして主人にフランス語にも同じような表現があるのかどうか尋ねてみたところ、

フランス語では、le quart d’heure de gloire (15分だけ名誉)と言うんだそうです。

やっぱりフランス人、あまり他人のことは気にしないのでしょうか、たった15分。一方日本人の75日は周りを気にしすぎ?主人も「75 日は長すぎるんじゃない?」と笑っていました。フランス人は言い争っていても、数分経ったら何もなかったように普通に会話しているけれど、日本人って本当 に75日(2ヶ月)くらい口をきかなさそうですよね。

mouth

quart(カール)は「4分の1」
heure
(ウール)は「時間」
le quart d’heure(ル カール ドゥール)は、つまり1時間の4分の1で15分。
gloire
(グロワール)は「名誉/栄光」

また、1時間を4分の1にする考え方は、日本人はあまり使い慣れていませんよね。でもこちらではよく使われることばです。例えば、

Il est trois heures et quart. 「3時15分すぎ」
It est trois heures moins le quart.  「3時15分前」

というふうによく使われます。

一人っ子はユニーク

先日「兄弟はいますか」と聞かれた主人がunique(ユニーク)と答えていました。兄弟がいるかどうかなのにユニークだなんて、と思っていたらフランス語ではユニークに「一人っ子」という意味があるんだそうです。

確かにuniという部分には「1」という概念が入っているので納得はいきます。でも、どうしても英語のユニーク「独特の、他にはない」や「珍しい」という意味が先行してしまい、フランス語で「一人っ子」というのには違和感を感じます。ちなみに英語では「一人っ子」をan only childといいます。

boy

辞書で確認してみると、

fils unique (フィス ユニーク) 「一人息子」
sens unique (サン ユニーク) 「一方通行」
voie unique  (ヴォワ ユニーク) 「鉄道の単線」

フランス語のユニークには英語のonly/single/uniqueなどが混ざっているようです。

もちろん、フランス語にも「独特の」「珍しい、奇抜な」という意味が存在しますよ。

***ちょっと余談ですがuniについて。uniはラテン語から来ており「1」 を意味していますが、このuniを使った単語いくつかご存知でしょうか。例えば、分かりやすい例でいうと、

①自転車は普通「2つ」車輪がついているのでbicycle(バ イシクル)ですが、「1つ」だとunicycle(ユニサイクル)で「一輪車」、さらに「3つ」 だとtricycle(トライシクル)「三輪車」となります。

また日本語でもよく知られているものでは、

unicorn(ユニコーン); 日本語でいう「一角獣」でしょうか。この単語は、uni(一 個)+corn=horn(角)という図式になります。
uniform(ユ二ホーム)は、ご存知の通り「制服」ですね。皆が同じ服を着て一つになるため。 英語では「同一の」「一様の」という意味でもよく使われます。
unit(ユニット)は、ユニットバスなどでよく聞くかもしれません。「構成単位」「(設備)一 式」という意味を持ちます。
unisex(ユニセックス)は、特にファッションなどでよく聞きます。「男女共通の」という意味 です。

そして、もう少し大きな規模で見ると、

universe

universe(ユニバース)「宇宙」「全世界」。uni「1つ」+verse「変化する」、 つまり「1つにされたもの」という意味からきています。verse(ヴァース)はreverse(リヴァース)という単語でも使われており、よくリヴァー シブル(裏返しできる)という意味で使っていますね。
university(ユニバーシティ)「大学」は、uni「1つ」+verse「変化す る」+ity(名詞語尾)から、「一つにまとまった社会」。

最後に、さまざまな移民からつくり上げられたアメリカという国は、

the United States of America; Unitedの部分は unite(ユナイト)という「一体化する」「団結させる」という動詞から。つまりStates(州)をUnited(一 体化させた)国がAmerica(アメリカ)だと言っています。

以上余談は英語の豆知識でした。

ごますり

「胡麻をする」とは、人に気に入られるような振る舞いをして、自分の利益をはかること。煎ったごまをすり鉢で摺ると、あちこちにごまがくっつくこと からこの意味が生じたといいます。(語源由来辞典より)

そんな胡麻をするような人がフランスにいるのかどうかは知りませんが、同じような表現があるということは、きっとフランス人の中にもこ んな人が存在するのでしょうか。ちょっとフランス人らしくないような気がしますが…。

フランス語では、胡麻をするを lecher les bottes/les pieds/le cul de ~ (レシェ レ ボットゥ / レ ピエ/ ル キュ ドゥ~)と言います。

lecher は「なめる」
les bottes 「ブーツ」
les pieds 「足」
le cul 「尻(下品なことばなので使わないほうがいいですね)」

つまり、胡麻をする=「ブーツをなめる、足をなめる、あるいは尻をなめる」となります。

boots

そして英語圏でも同じような表現を持っています。
lick his shoes 「彼のくつをなめる」
あるいは、
apple-polish 「りんごを磨く」となります。

なめるのはどうも、りんごを磨くくらいがいいですね。

また、フランス語で lecher les vitrines(レシェ レ ヴィトゥリーヌ)は、「ショーウィンドーをなめる」で、そこから「ウィンドーショッピングをする」という意味につながります。よくデパートのショーウィン ドーに顔をくっつけてのぞいている人がいますが、おもしろい表現です。たしかになめてそうな感じがします。

*アクサン記号は省略してあります。

—後日談:主人の話によると、フランスにもたくさん「ごますり」が存在するそうです。プライドが高そうな人でも、ボスが現れると別人のようにペコペコし始めるんだそうですよ。ボスの好きな話ばかりして持ち上げようとするらしい。どこも同じなんですね。